TAROの塔(岡本太郎)
岡本太郎にも松尾スズキにもなんの興味もないのにこのドラマを見る気になっていたのは、もちろんプロデューサーがあの「ハゲタカ」とあの「外事警察」の訓覇さんだったからだ。「ハゲタカ」も「外事警察」も真剣勝負のドラマだった。特に「外事警察」はリアルタイムで見ているときは画面から目を離すことができず、物語のただならぬ空気とドラマがもたらす凄まじい緊張感で見終わった後は本当に疲れきってヘトヘトになったものだった。あんなすごいドラマをまた見たいと思っていたところに、訓覇さんの次の作品のニュースが入ってきて、期待半分不安半分で見てしまいましたよ。

でも黒い画面に「土曜ドラマ」って文字が浮かび上がると、それだけでもうわくわくしちゃうわね。

[あらすじ]
「「人類の進歩なんかくそくらえ!」。昭和42年、「大阪万博」のプロデューサーに就任した岡本太郎(松尾スズキ)は真っ向からテーマに異を唱え、一大国家イベントと戦う決意を表明。それは、太郎をはぐくんだ岡本家の反骨精神でもあった。歌人の母・かの子(寺島しのぶ)、漫画家の父・一平(田辺誠一)、養子である秘書・敏子(常盤貴子)の4人が織り成す破天荒な家族もようを軸に「太陽の塔」をつくるまでの太郎の戦いを描く」(NHK番組表より)

まあ、「岡本太郎」などという(広く知られている)戦後最大の奇天烈キャラを、生後100周年イベントの一環というのがあったにせよ、よくまあ題材にしようと思ったもんだよなあ、というのが第1回を見ての感想だ。例えばビートたけし、例えば美輪明宏、例えば赤塚不二夫などを思い浮かべてみた場合、どの御仁も強烈なキャラクタではあるものの、まだドラマにはなる余地はあると思う。しかし岡本太郎といった場合。あまりにも強烈過ぎて、しかもメディアにも非常に多く露出していたために見るものに先入観を与えてしまって、あのキャラを見ただけでもう思考を止めてしまうような気がする。仮にドラマ化できたとしてあのキャラから言ってマンガになりかねない、そんな危険人物(笑)をよくもまあこれほどしっかりと映像化したものである(←エラソー)(でも岡本太郎もそりゃあもうベラボウな芸術家だっただろうが、彼を認め、支えた周囲の人間もすごかったんじゃないのか?)。

しかし訓覇さんはこう言っている(公式ホームページより)。

「言うまでもなく岡本太郎は天才である。残された作品や言葉は刺激に溢れ、その生涯は波乱に満ちている。では何故、今まで映像化されなかったのか…?簡単なことだ。勝ち目が薄いからである。いまだ記憶に鮮烈に残るご本人の存在感、圧倒的な行動範囲、そして共感のつけいる隙のないキャラクター…。だが「迷ったら危険な道を選べ!」と岡本太郎は言った。僕は、ある時期この言葉をずっと呟いていた気がする。「魅惑の言葉だが、果たして、真に受ける自分は馬鹿なのではないか…」と錯乱しながら。いつ決断したのかは忘れてしまった。ただ、『やると決めるまでが地獄だった』ことは忘れられない。今は、こんな危険な船に同乗して頂いた皆様と一緒に、気持ちを奮い立たせる日々である。
―TV界の底に、こんなドラマがあったっていいじゃないか―」(制作にあたって--製作統括・訓覇圭)

カッコええ……。「迷ったら危険な道を選べ!」か。……できねーよ。

さて第1話は太郎(松尾スズキ)の母・かの子(寺島しのぶ)と父・一平(田辺誠一)、太郎の子ども時代(高澤父母道)と、大阪万博のシンボルタワーの製作担当者となった1967年(昭和42年)を交互する。少年時代を演じた子役の子が本当によかったのだが、なによりももう寺島しのぶの怪演に圧倒されっぱなしだ(笑)。お芝居からいってもあのメイクからいってもドラマの一番最初に映し出された辺境の祀りのシャーマンのよう、っつーか。岡本かの子といえば白塗り化粧の写真が記憶にあるが、あれは大正、昭和初期のモガの皆様の一般的なものかと思ったら、あの当時でもやっぱり白塗りお化けだったんだということもわかってびっくり。しかし視聴率は3.4%だそうで、たまたまチャンネルを合わせた人があの岡本かの子を見てびっくりしてチャンネルをまた変えちゃったんじゃないのか?(笑)。また、あの母とあの父にああ育てられたからこそあの太郎があるのだという説得力があり、なおかつ現在と過去が交互して描写されるのにもかかわらず、混乱させることなく、かつ交互に描かれるそれぞれの時代の太郎の爆発人生(笑)という構図自体、岡本太郎という人となりを表現しているように思える脚本がすごい。

でも私はあの「太郎」が形成されるに至る過去よりも現代(昭和42年/1967年)の「太郎」描写のほうがずっと面白かった。なんというか過去のあの物語部分はすごいとは思うものの「へぇー」としか思えなかったというか。それにひきかえ現代の太郎は存在自体がエネルギッシュで興味深い。松尾スズキの演技は最初はどうしてもあの岡本太郎の物まねにしか見えなかったが、見ているうちに、ビジュアル的にはいくらハゲ専でもこのハゲは勘弁して、な容貌(←ヒドイ)なのにも関わらず(笑)、ものすごく「岡本太郎って一体どういう人なんだろう」と興味が湧いてくる。そしてあの松尾スズキの「太郎」をもっと見てみたくなる。

音楽がまたいい。もちろん担当は日本一の超クソゲー(←私的には褒めてます(笑))「クーロンズゲート」の作曲者・島邦明、他にはTVゲーム「どこでもいっしょ」やドラマ「NIGHT HEAD」など。私はiPodに入れて今も通勤途中にたまに聞いているのだが「クーロンズゲート」の音楽は本当によかったんですよ(もちろん、ゲームの方も大好きだが。クソゲーだけどさ)。今回のこの「TAROの塔」の音楽も原初のエネルギーと祝祭のパワーを感じさせるテーマになっていていいです。

なお、ドラマ中に沢山登場する岡本太郎の作品自体には全く心惹かれなかった。だって抽象画って嫌いなんだもーん。という訳で続いて第2回の感想へ~。
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テーマ:NHK
ジャンル:テレビ・ラジオ
コメント
お久し振りでごぜえやすだオヤビン
ってすっかり子分の気分。

岡本太郎をリアルタイムで観てた(TV)身としては、松尾スズキさんはまだまだ大人しく感じてしまいます。
もっと歌舞伎みたいに見得を切ってましたよぉ太郎さんは!
何だか、なんで取り巻きがそんなに持上げるのか判らないけど、面白いおっさんだったって印象が有ります。
でもあの印象を除いて見ると、作品自体は凄いと思います。
生きてるうちはあのキャラクターで色物みたいに見られて、損してたんじゃないのかなあ・・・
私、子供だったけどそう思いましたもの

やっぱりドラマはPなんだなと、リョマデンとかこれとかハゲチャンとか観てきて思いました(エラソー)
スズキさん、もっともっと怪演してもいいと思います。
実物はもっと凄かったですから。
縄文のエネルギーと言うか、上手く言えませんけど・・・・・・
何か小品でもいいから太郎さんの作品欲しいな~
でもバカ高いんだよなあ~買えねえよ~
2011/03/09(Wed) 05:47 | URL | ちいネエ | 【編集
>お久し振りでごぜえやすだオヤビン

いつの間にオヤビンに!?(笑)

>岡本太郎をリアルタイムで観てた(TV)身としては、松尾スズキさんはまだまだ大人しく感じてしまいます。

まあオリジナルの方がパワーがあるのは当たり前なので仕方がないですよ。だからこそ現代芸術の巨匠足り得たわけだし。

>もっと歌舞伎みたいに見得を切ってましたよぉ太郎さんは!

第2回の感想を今書いているんですが、あの「岡本太郎」も彼の作品だったのではないか、と思いましたね。だからこそのあの過剰なキャラクタなのではないか、と。

>やっぱりドラマはPなんだな

プロデューサーの力は本当に大きいですね。特にくるべさんは今までの「ハゲタカ」「外事警察」「TAROの塔」という流れを見ると特に。去年の「龍馬伝」の鈴木Pにしたって色々オヤジ節炸裂で、私も文句ばかり行ってましたが、今年の「GOW」のアレに比べたら(略

>縄文のエネルギーと言うか、上手く言えませんけど・・・・・・

原初の想像力とかエネルギーとかパワーって感じですかね。実際はどうだかよくわかんないですが、この「TAROの塔」を見ると、ただ単に才能をダダ漏れさせていたのではなく(なんちゅう表現)、すっごく作品を「作り上げていた」という感じがするですね。でもま、欲しいとは思わんですが(あれ?)。
2011/03/09(Wed) 08:52 | URL | tsumire→ちいネエさん | 【編集
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