去年の秋の事だが、あのnanakoさんに唆されて向井理主演の「僕たちは世界を変えることができない。」をそのうち見に行くから、という話になっていたのだが(2011年10月4日「つい、ひとひねりしてしまう悪い癖」)、去年は11月あたりから仕事が無茶苦茶忙しくてとてもじゃないけどロードショーで見る事が出来ないまま日々が過ぎ、忙しいながらもハゲタカ廃人な皆様と忘年会をやった時に「2月に早稲田松竹でやりますから見て下さいね」と念押しされてiPhoneにもアラーム入れちゃったもんだから、上映開始日の2月4日にはちゃんとアラームが鳴ってましたよ……。

私は向井理には全く興味がないし、しかもいい話系のドラマは苦手なので見ないのだがnanakoさんの唆し方が絶妙だったのである。映画館であの「笑う警官」を見て余りのひどさにもう一度確認のため見たくなったり(ちなみに見た時の感想はコレ→2009年11月14日「映画「笑う警官」」)、超駄作大作という噂の映画「SPACE BATTLESHIP ヤマト」を確認のため見に行ったり(2011年1月13日「映画「SPACE BATTLESHIP ヤマト」)、あの去年の大河ドラマ「江」のひどさをたまに確認のために見てみたりという、私のゲテモノ趣味を刺激するキーワードを私にささやいたのである。

「僕セカは、贅沢な×××××ですから」
「なぬっ、それは見てみたいかも!」

この「贅沢な」の後に入る単語はそのままなんの説明もなく使うと非常に誤解を呼ぶ言葉なので、折り畳んでから説明するが、見に行く前に会社でランチ仲間の皆には「贅沢な×××××っていう話だから、これから見に行ってみるんだよね」と話していたのだ。

Nさん「贅沢な×××××って、どういう意味?」
私「多分、私も友人(nanakoさん)も脚本と演出の密度が高くて、しかも細かい所をほじくり返しても必ずそれなりの収穫があるようなドラマばかり見ているから、それに対して敢えての×××××ということなんじゃないかなあ」
Y岡さん「だいたいどういう映画なんですか?」
私「んーーー、向井理が主演でー」
Nさん「向井理って薄いよね。Kさん(←私の事だ)は一番興味なさそうなタイプ(笑)」
私「そう。大体若手イケメンに全く興味がない。私はジジィ好きだからさー、でも老け専だと悲しいのは訃報を聞く事が多いってことだね」
Nさん「確かに(笑)。でもKさんって、120歳くらいまで生きそうな気がするね」
私「なんだ、それ?」
Y岡さん「そうそう、ずっと長生きしても今とほとんど変わらないような気がしますね」
私「あー、そんで120歳になっても今と同じような事を言ってて、やっぱり向井理には興味がないとか言ってて?」
Nさん「でもそのころにはKさんが生きてても向井理はもう死んでるかもね」(←ヒドイ(笑))
私「ははは。で、物語はカンボジアだかどこだかに学校を建てるっていういい話系の話じゃなかったかなー」
Y岡さん「私はそういうのは苦手かも」
私「私も多分ダメだと思う。でもさー、『贅沢な×××××』ってのが気になってさ」
Nさん「ほんと、物好きなんだからー。でも映画とかテレビドラマを見る時にはすごく頼りにしているから!」

と言う訳で映画を見た感想はネタバレを含むので折り畳みますが、それ以上に、えーー、基本的に感動作品の僕セカに対して上から目線で勝手な事を書いていますので、そういうのを見たくない方は読み飛ばしてね。

[あらすじ]
「医大生のコータは、あるパンフレットを見て150万円でカンボジアに学校を建てられる事を知る。触発された彼は、友人の芝山と矢野、パーティーで知り合った本田を誘い、カンボジアに学校を建てるための“そらまめプロジェクト”を立ち上げた。カンボジアを訪れた彼らは虐殺の傷跡やHIVの蔓延、地雷原といった、カンボジアの現実を目の当たりにする。帰国後、彼らは自分に何ができるのか、悩みながらも資金集めに奔走するが…。」(goo映画紹介より)
nanakoさんがささやいた危険な単語(笑)、それは「贅沢なスッカスカ」でした。この映画を見る前の私の予想としては、「ハゲタカ」や「外事警察」みたいな、詰め込めるだけ詰めこんで、でもそれを表面上は全部見せていない、けど発掘してみたらどこをほじくっても必ず身があるみたいなドラマとは違って、色んな意味で敢えて詰め込まない、時間的にも空間的にも余裕があるタイプの作品なんじゃないか?と思った訳ですよ。たまにピグライフの庭でnanakoさんと話すと「大友さんには絶対出来ないことだね」って言ってたしさ。とはいえ「スッカスカ」という単語は使っていてもけっして作品を貶しているのではない。

で、「贅沢なスッカスカ」だったか?

まずは「へーーー、なるほどなー」でした。なんというか、ちょっと不思議な映画だった。私みたいに構えて「贅沢なスッカスカ」の謎を追求しようと思って見ている(っつーか、あら探ししようと思っている?)ような超邪道の観客(笑)でなければ、多分普通の人は普通に感動する話じゃかろうか。特に主人公・コータ(向井理)がカンボジアに行って、なぜそこに学校を作る必要があるのかという根本的な原因というか、カンボジアの凄まじい歴史と現実にぶつかった時の描写はドキュメンタリ番組のようで、しかも向井理の演技が「あれは素じゃないのか??」と思うような描写でビックリ。でもnanakoさんによるとあれは素じゃなくてあえてコータの素の部分が見えているように演じているそうで、ホントかよ、と思ったのも事実(笑)。

しかしね、ここのドキュメンタリータッチの部分でキャラクタとして演じているのではなく俳優さんのそのままが出ているんじゃないのか?と思えた部分とか、カンボジアの現状を説明している場面なんかはあまりにもストレート過ぎて、臆面もなくそれをそのまま流すというところが、もしかして「スッカスカ」につながっているのか? とか、他のドラマ部分が色々ベタすぎるのにこのセミドキュメンタリ部分とごっちゃになっているあたりが、結構このコータの内面をも表現しているのかもしれないけど、でもこの混在ぶりがやっぱりスッカスカ?とか思いながら見てしまいました。ううううむ、やっぱ邪道。

どうもこの手のいい話はやっぱり苦手だ。なので他にも見ながら思った事を簡単に箇条書きにしてみると、

・タイトル名はオリジナルではないそうだが、「僕たちは
世界を変えることが
できない」
と三行に分けているのは、不器用で無様な青年が色々な事を一つ一つ確認しながら成長して行く様を表現している事を暗示しているようにも見えて秀逸(と思う)。
・阿部寛やリリー・フランキーのような癖のある役者さんが出て来るとそこの部分がやけにドラマっぽくなる。
・主人公コータの「何も出来ない感」はすごくよく出ている。
・実話である事に引きずられていないか? どうせ最後に実話を元にしたフィクションと明記してあるんだからもっと改変してもよかったのでは? とか言ってても原作を知らないからどこをどう変えてどこをどうそのままなのか知らないけど。
・カンボジアから戻る時に現地ガイドのおじさんがコータに「向井さんも元気でね」と言っていた。
・コータの部屋の本棚の目につく所に手塚治虫の「火の鳥」が並んでいる。ということは当然「ブラックジャック」も読んでいるはずで、今現在実際の医師になっている人の中にも多くいるそうだが、コータは「ブラックジャック」を読んで医者になろうと思ったのではないか? でもぱっと見、本棚の目につく所にその「ブラックジャック」がないのは(私も一瞬しか見てないので本当は目につく所にあったのかもしれないけど)、やっぱりちょっとそれはあまり大っぴらにしたくないというコータの性格を表現しているのか?
・段々と道が見えて来るところはちゃんと出ていたと思う(←エラソー)。
・セミドキュメンタリ部分、音楽と写真で適当に流してないか? よくあるテレビのドキュメンタリのエンディングみたい(←nanakoさんは特にこの部分がスッカスカに感じたそうだ)。
・最後に「青空」をカンボジアの子ども達の前で歌う場面、せめて他の曲にした方がよかったのでは? 事実として本当に「青空」を歌ったのかもしれないし、歌詞はすごくいい曲だと思うけど、あの歌いっぷりではカンボジアのあの子ども達にとっちゃわめいているようにしか聞こえず何も伝わらなかったんじゃないのか。

というところだろうか。いや、普通に見たら普通に感動するドラマだと思います(←しつこい)。でも、私はnanakoさんの唆しがなかったら多分一生見なかった映画だと思う(笑)。そう言う意味で食わず嫌いはいかんよね、見てみなくちゃわかんないもんなというのを改めて実感した次第でございました。さて、この次は「ドラゴンタトゥーの女」か「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」を見に行こうかなー。でも早稲田松竹のラインナップが実にいいので、またそこらへんを見に行くかも。って、本当にそんなヒマがあるのか、自分!?
関連記事
テーマ:見た映画
ジャンル:映画
コメント
ご覧頂きありがとうございました
こんばんは tsumireさん

とうとう映画館まで足をお運び頂きまして
ありがとうございました。

そうですか例の伏字は想像もつかないものでしたね。
ある意味おどろいたと同時に納得したのも事実です。

まあ主演が向井くんというのを差し引いても
映画として「普通に感激」した私ですが
やっぱりtsumireさんは目の付け所が違うなと感心しました。

まあ、監督の深作健太は父親の深作欣二監督の
遺作ともなった「バトルロワイヤルⅡ」を
引き継いで完成させたのが初映画監督作です。
この作品もやたらめったら学生が殺しあうだけ
というある意味がらんどうだったような…。

舞台挨拶で聞いたのですが脚本自体は20稿くらいに
なったようでフィルムも200時間以上は回したようです。

原作本も読みましたが映画との差異はあまり
感じませんでしたね。
(とは言え一番最初の自費出版のものでは
ありませんので何とも言えません)

主人公の甲太の部屋はあの年代の
(物語の舞台はドラマ版「ハゲタカ」の放送より前)
ブルーハーツが好きで内向的な医大生が
住んでいそうな部屋を美術さんがこだわって
作りこんだそうなのできっとどこかに
「ブラックジャック」はあるかと(笑)
DVDが発売されたらチェックしてみます。

上映最終日の早稲田松竹は「モテキ」では
立ち見がでるほどの盛況ぶりでした。
椅子もとても座り心地がよく、間隔も角度も
素晴らしく良くて思わず眠くなってしまったほどでした。

2月18日から24日の「探偵はBARにいる」と
「カリオストロの城」は絶対に観にいきたいです。
予告編が「モテキ」の前に流れてとーっても良かったです。


ゴールデンウィークの頃には「未知との遭遇」も
やるそうですしラインナップをチェックしたい映画館です。
(でも残念なのは休憩時間が短すぎなんですよね。
せめて15分は欲しい。そして映画館ならではの
ポップコーンも売っていなかったので空腹に耐えかねて
炭酸飲料を2本も飲んでしまったのでした)

近くには「戻ってこい」教会もありますしね♪
(今回ももちろん立ち寄ってます)
2012/02/14(Tue) 02:15 | URL | むぎこがし | 【編集
おおっ~!久しぶりに長くて読み応えのあるブログでうれしい(笑)
おまけに早稲田松竹、懐かしい~。(あれっもう1本なんだったの?)
と、向井理はとことん眼中にないんですが、「贅沢なスッカスカ」というネーミングはとても素晴らしいと思います。
思わず、今まで見た映画の中で「贅沢なスッカスカ」大賞はなんだろう???と考え込んでしまったよ。
映画じゃないけど、最近1番この言葉がしっくり来る作品は「南極大陸」かしらね?

向井理とか、もこみち(なぜ並び?)ってスッカスカな役がよく似合うよね。あっ別にけなしてる訳じゃないんですよ、ファンの方々。
2012/02/15(Wed) 18:38 | URL | oha~ | 【編集
>o~haさん

横から失礼します。
向井くんの「僕せか」と併映されたのは
「モテキ」でございました。
tsumireさんは残念ながらご覧になれなかった
ようですがこちらも「自分に自信のない男の子」
のもがき苦しみながら次の一歩を歩みだす様を
描いた映画です。(異論はあるでしょうが)

大友監督びいきの大根仁監督
(「湯けむりスナイパー」の監督さんでもあります)
が盛大にサービス精神を発揮してエンドロールの隅々まで
遊び心をもりこんだ「エンターテイメント作品」
だったと思います。

向井くんの「僕せか」も来月にはレンタル
されるかと思いますし、そのうちテレビで
放送する際にでもご覧ください。

ちなみに「モテキ」→「僕せか」の順番でなく
「僕せか」→「モテキ」の順番で観て下さいと
tsumireさんにはお願いしました。
(この順番はかなり重要デス)
2012/02/15(Wed) 20:07 | URL | むぎこがし | 【編集
むぎこがしさん、ありがとうございました。
「モテキ」見ましたよ!
50代女2人で(笑)

私的にはかなり面白かったです。
遠~い昔は音楽好きな頃もあって、西は箱根辺りまで追っかけてた
バンドなぞもございましたので、音楽オタクたちの話に楽しめました。

しかし見終えた50代女子(?)たちの感想は「若いってメンドクサイ!
2度と若い頃なんかに戻りたくないねぇ」でした(笑)
2012/02/15(Wed) 23:54 | URL | oha~ | 【編集
>そうですか例の伏字は想像もつかないものでしたね。

長い間、気を持たせてしまってすまんです。ファンが聞いたら激怒もんかなーとか思いつつ私は別にファンじゃないしー、とりあえず若手イケメンと持ち上げているし(笑)、この映画が好きならスルーしてねとあらかじめ断り書きつけたしー、ま、いっかと思っております。

>やっぱりtsumireさんは目の付け所が違うなと感心しました。

すみません、屈折しきった観客で。まあ「映画」を楽しむという観点から見に行ったのではなく、疑問の確認のために行ったようなもんなので、そこんとこ許してつかあさい。

>この作品もやたらめったら学生が殺しあうだけ
>というある意味がらんどうだったような…。

これは原作もそうなのでわ。

がらんどうだったような…。

>舞台挨拶で聞いたのですが脚本自体は20稿くらいに
>なったようでフィルムも200時間以上は回したようです。

うーみゅ。デビッド・フィンチャーは100テイクぐらいとりまくるそうですがクリント・イーストウッドは俳優さんに注文も付けない上にほとんどワンテイクだそうですね。何が言いたいかっつーと、どういう撮り方、どういう作り方をしようと、映画は(に限らず、作品というものは)結果が全てということですよね。

>原作本も読みましたが映画との差異はあまり
>感じませんでしたね。

ふーむ。映画と活字メディアでは方法も形も時間の制約も全く違う訳ですから全く同じストーリーだったとしても差異を感じないというのはあり得ないと思うんですが、実際に差異を感じないんだとすればそれはそれですごいのかもね(でもだったら映画って何?とは思いますが)。

>上映最終日の早稲田松竹は「モテキ」では
>立ち見がでるほどの盛況ぶりでした。

結局「モテキ」は見ませんでした。興味はありますが余裕がない時はそこにあまり時間を割く気にならないんですよね。

>2月18日から24日の「探偵はBARにいる」と
>「カリオストロの城」は絶対に観にいきたいです。

早稲田松竹は本当にラインナップがいつも素晴らしい。早くここで「ハゲタカ」をやって欲しい物です(泣)。

>ゴールデンウィークの頃には「未知との遭遇」も
>やるそうですしラインナップをチェックしたい映画館です。

ほお。もう1本は何かしら。って、組み合わせ具合も楽しみな映画館ですよね。トリュフォーつながりでトリューフォーの作品(「アメリカの夜」とか「野生の少年」あたり)とか、あるいは「宇宙人ポール」でもいいですよね。「惑星ソラリス」とか「2001年宇宙の旅」はパスしたいところだ。
2012/02/20(Mon) 01:09 | URL | tsumire→むぎこがしさん | 【編集
>おおっ~!久しぶりに長くて読み応えのあるブログでうれしい(笑)

最近怠けがちですまん。書きたいネタは山ほどあるんだが(ドラマを始めとして最近見た映画とか、去年の冬コミネタもまだ書いてないし、中学校のPTAネタも面白いのがあるし、ここんとこの多忙事情についても色々書いてみたいんだけどさー)なかなか書けなくって残念。

>おまけに早稲田松竹、懐かしい~。(あれっもう1本なんだったの?)

早稲田松竹はいいよ~。古過ぎない作品をいい感じのペアで見せてくれて、名画座感満載で。

>と、向井理はとことん眼中にないんですが、「贅沢なスッカスカ」というネーミングはとても素晴らしいと思います。

命名者はnanakoさんです(笑)。なかなか心惹かれるフレーズでしょ?

>思わず、今まで見た映画の中で「贅沢なスッカスカ」大賞はなんだろう???と考え込んでしまったよ。

実のところ私はそんなにスッカスカとは思わなかったんですよ。なんというか場面によっては直球すぎるというか、素材をもっと料理して出せよ的な部分とか、ありがちなステレオタイプな演出に、それはいかがなものか?と思わないでもないというか(←エラソー)。

>映画じゃないけど、最近1番この言葉がしっくり来る作品は「南極大陸」かしらね?

あーーー、なるほど。でもこれは「贅沢なスッカスカ」じゃないと思う。制作費とキャストが「贅沢」で中身が「スッカスカ」なのでは(←あくまでも「贅沢」と「スッカスカ」が別れている)。じゃあ「贅沢なスッカスカ」になにがあるか、、、。普通の「スッカスカ」なら「笑う警官」、「ヤマト」はスッカスカとはかなり違うしなー。難しいわ~。

>向井理とか、もこみち(なぜ並び?)ってスッカスカな役がよく似合うよね。あっ別にけなしてる訳じゃないんですよ、ファンの方々。

貶してないようにはきこえないぞー(笑)。
2012/02/20(Mon) 01:21 | URL | tsumire→oha~さん | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事へのトラックバック