タイガー&ドラゴン第9話(6月10日放映)。シュールな落語にバイオレンスな展開の現実、いったいどういうふうに落ちるんだろうと思ってみていたら、きれいに決まった。本当に脚本がうまい。かたぎの世界とダークサイドの間でもがく虎児(長瀬智也)から目が離せない。

今回のオープニングは組長(笑福亭鶴瓶)の高座、「粗忽長屋」の噺を「うっかり」はじめそうになり「このあとどんちゃんがやるのかいな、ほな、やめとくわ」と一言。前回ではどん兵衛(西田敏行)が「謙ちゃん(組長)がやっていたオチだから」「出来心」の「裏は花色木綿」のオチを使わないと言っていたが、今回はどん兵衛がトリで話すネタだから「粗忽長屋」はやめとくわという組長。毎回少しずつ描かれるこの二人の微妙な友情、400万円の貸し借りの際には一体どんな会話があったのか、ちょっと気になる。

落語に対して貪欲にネタ作りをするようになった虎児だが、組(ウルフ商会)の金を横領して逃げている田辺ヤスオ(北村一輝)に関わることになったことから今回はダークでバイオレンスな展開に。金を山分けするから自分を殺したことにして刑務所に入っておいてくれというヤスオを拒否して、虎児は「俺のことを家族だと思ってくれる奴がいるんだよ」「俺の代わりはもう、いねーんだよ」と言う。今まではどん兵衛たちが虎児のことを「家族なんだから」と言ってきていたが、今回は虎児もまた、谷中家の人々のことを大事な家族と自覚してきたことがわかる。しかしそれだけに、何か事があって谷中家の人々を守らなければならないような場面になったとき、今回ヤスオを助け出すためにどん兵衛の弟子を辞める事を申し出たように、彼らの前を去っていく可能性がどんどん高くなってきたように思える。

ヤスオを探すウルフ商会の連中に店を荒らされた竜二(岡田準一)は虎児に「俺ら、関係ねーんだよ」「あんた、やっぱりヤクザなんだよ」という言葉を投げつける。虎児がやっぱりヤクザなんだというよりも、むしろ竜二ってやっぱかたぎの世界のお坊ちゃんなんだなーと感じた瞬間だ。また、今回は竜二もまた宙ぶらりんの立場にいるのだということがわかる。かつてどん兵衛の弟子という立場にあったときは父のことは「師匠」と呼んでいた竜二だが、落語の世界に戻ると決めて谷中家でどん兵衛たちと話していてもそれは師匠と弟子という立場ではなく、どちらかというと落語がよくわかっているオブザーバーのようにも見えた。それは服飾の世界で結局一旗挙げることもできずに元の古巣に戻ることに抵抗を感じている竜二の気持ちの表れなのか。

着物と扇子をお返しして弟子辞退を申し出る虎児にどん兵衛は「ヤクザとしてではなく、噺家としてなんとかしておいで」と言う。えーーーーーっ、こんなバイオレンスな展開にどうやって噺家として立ち向かえと!? お笑いは世界を救う?? しかし話は思いがけない展開をする。ヤスオを片付けようとしていたウルフ商会の二人の追っ手のうち、手下のほうが兄弟子、じゃない兄貴分の男を殺してしまったのだ。そこに駆けつけた虎児(と、後から駆けつけた竜二)は、殺された男とヤスオを入れ替えてヤスオが殺されたことにしてしまう。ヤスオの身代わりとなった死体を運ぶヤスオは、手伝おうとする虎児を拒否して「お前はもうヤクザじゃねぇんだぞ、噺家が捕まっちゃマズイだろ」と言う。

「おい、聞いたか、ヤクザじゃないってよ」と言う虎児に
「ヤクザが言うんだから間違いない」と答える竜二。

そしてヤスオがたずねる。「この担がれている死体が俺なら、担いでいる俺は一体誰だい?」

ラスト、いつもの授業料の受け渡し場面でどん兵衛が「一日も早く堅気に戻るんだよ」と言う。虎児が堅気に戻るために、支えてくれている人たちがいる。今回は見終わった後の読後感のようなものが明るく、目の前が開けてきたような気がする展開だった。しかし、ダークサイド(新宿流星会)にも虎児を見守る人々がいる。次回は銀次郎(塚本高史)が虎児に「そんなに堅気がえらいのかよ」という台詞があるようだ。あと残すところ2回、虎児(と竜二)の明日はどっちだ?