タイガー&ドラゴン第10話(6月17日放映)。今回のお題は「品川心中」、オープニングもどん兵衛(西田敏行)の高座「品川心中」から始まる。話は容貌衰え看板花魁ながらすっかり落ち目となっているお染が、女郎宿の一大イベントのための金を用意することができずにそれならいっそ死んじまおうと心中相手を物色しはじめる。本屋の金蔵と心中することにしたが、なかなかふんぎりのつかない金蔵を海に突き落として自分も飛びこもうとしたところで、スポンサーが見つかって死ぬのやめることにする。金蔵の方は海に突き落とされたものの、浅瀬だったので死ぬこともなく仕方なく幽霊のような姿になって親方の家に戻ると、ちょうど博打をやっていた親方連中が大慌て、というのが前半のストーリー。

後半の話もあるがそれは「金蔵がお染めに仕返しをする話だが、それは暗くて笑えないので、今では誰もやらない」のだという。納得しない虎児(長瀬智也)にどん兵衛は「私達の商売はね、お客様を楽しませることなんだからね」と言う。「そんなこと今更言われなくてもわかってるよ」と言う竜二(岡田准一)。「わかってないよ。お前たちの今の顔には、福がない。ちょっと笑ってごらんよ」と言うどん兵衛に張付いたような笑顔を見せる二人。「ダメだって笑うんだよ。どんなに追い込まれたって、平気で笑ってられるのが本物なんだよ」と語るどん兵衛。今回は表向きは「品川心中」の前半部分をベースに進み、劇中劇の方も前半部分のみだったが、現実にはダークサイドで「品川心中」の後半部分の物語が展開していた。

谷中家に来て、虎児にウルフ商会に入るよう言い寄る力夫(橋本じゅん)に、どん兵衛は「小虎は林屋亭どん兵衛の名を継ぐ子だから」と口をすべらす。驚く虎児と竜二。後で虎児は師匠につけてもらった「小虎」の名前が好きだからどん兵衛の名前はいらないと断る。でも「小虎」という名前は虎児同様にどん兵衛にとっても実は特別な名前だったのではないだろうか。他の弟子達が「どんつく」だの「うどん」だのという名前をもらう中、虎児がもらった名前は「小竜」と対等な「小虎」(主役が長瀬と岡田準一だから、とか小竜は炬燵とかけているとかは、この際なし)。虎児の弟子入り志願を認めた時に、どん兵衛が虎児の中に見たものはなんだったのか……。
                     
虎児が力夫からの誘いを断ると、ウルフ商会は新宿流星会に殴り込みをかけ、組長(笑福亭鶴瓶)も日向も傷だらけにされてしまう。ウルフ商会へ行こうとする虎児を組長は止めるが、虎治はどん兵衛からもらった腕時計を外して、銀次郎(塚本高史)と二人でウルフ商会に乗り込んでゆく。虎児が谷中家を去るきっかけは堅気サイドの話の方からではないかと思っていたが、そうではなく、虎児のもう一人の「父」である組長への恩返しからだった。一方、小虎の出番のはずの高座にはもちろん虎児の姿はない。小虎を待つどん兵衛に対して竜二が土下座して「噺をやらせてほしい」と頼み込む。笑ってご覧よというどん兵衛に竜二が見せた笑顔、そして竜二が高座にあがる。

いやあ、でも「俺の品川心中が今ならできる」とは言っていたものの、あのスタイルは完全に虎児のものではないのか? 虎児の高座を見て落語の世界に戻るきっかけをつかんだ竜二だが、まだまだというか、虎児と同じスタイルじゃあだめじゃないのか。それとも最終回で竜二の進化形が見られるのか? また、レンタン自殺の一件には笑ったが、メグミ(伊東美咲)が自殺志願サイトになんでいきついたのか、ちょっと唐突だったような気もする。

虎児はウルフ商会に「仕返し」をし、銀次郎に2代目としての自覚を持たせた後に自首をする。テレビに映る虎児を見て驚くどん兵衛と竜二。しかし、手錠をかけられた虎児は笑っていた……。組長への恩返しのため落語の世界を振り切った虎児だが、心は本物の噺家になっていたのだ。

虎児が落語の世界にいられなくなることを何よりも恐れていたが、最終回の1回手前の今回、そのいきさつが入ったことでむしろほっとしている。なぜなら最終回でこの話が描かれたのなら、虎児は本当も遠いところに行ってしまうことになるが、今回描かれたことで一旦は落語の世界から去って行くことになる虎児も、きっといつか戻ってくることになる物語が最終回で描かれるような気がするから。でも次回の放送時間はいつもと同じ1時間弱。予告を見ると色々盛りだくさんみたいなのに大丈夫なのか? ヨソ様みたいに最終回だけ拡大枠でやってくれたって、あたしゃ怒らないよ。