この世界の片隅に アイ・イン・ザ・スカイ
先週の水曜日に映画「この世界の片隅に」を、今日は映画「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」を観てきました。

「この世界の片隅に」はあまりにも評判なので気にはなっていたものの今ひとつ気が進まなくてどうしようかと思っていました。号泣ポイント多すぎとか感動しましたという声をよく聞いたので、なんだかなーと思わないでもなかったし、戦争映画というのにも全く興味が湧かなかったし、だいたいアニメ映画自体あまり心惹かれなかったし。私の周囲の映画好きも「気になるけど気が進まない」「なんか、こう……、どうなの?」とか言い合う屈折者揃い(笑)。でも思い切ってえいやっと見に行ってきました。観た結果ですが、よかったです。1mlも涙は出ませんでしたが、面白かったです。というか、この映画での泣きポイントがわからない。ま、私が人の心を理解できない冷血人間だからなんでしょうけど、悲しい場面や感動できる場面は理解できるんだけど、それよりもこれは怖い映画なのでは?と思いました。

日々のささやかな幸せや笑いのある毎日を非常に丁寧に描いていて、言葉やセリフでいちいち説明しないんだけどちゃんと絵で見せてくれているので、見れば主人公たちの行動や気持ちや背景がちゃんと読み取れるし、主人公すずが絵を描くのが好きで得意であるというのを生かして、気持ちや情景、あっては欲しくない場面をかなり思い切った方法で描写していて、アニメでなくては描けない世界をしっかり作り上げていました。そして何よりも、日常生活をとても丹念に描いているのでその背景にある戦争状況が却って際立っていました。これは今現在、シリアやイラクで起こっていることと何ひとつ変わらないのでは? 今、戦争で辛い日々を送っている人たちも24時間戦っていたり怯えていたりするわけではなく、生きている以上お腹は空くし排泄もするし、ささやかな笑いの場面だってある、でもいつ死ぬかわからない日常がある。それはすずの時代も、現在の戦争がある地域の人たちも変わらないのでは、と思わせられました。

そりゃね、大事な人を亡くしたり、自分の大切なものが失われる悲しみや辛さ、それを超えたところにあるささやかな幸せとかわかるんだけど、それ以上に戦争がある日常について考えてしまいました。

まあそんなこともすっかり忘れて、ナイスなババァ好きな私は完全に主演のヘレン・ミレン目当てに本日「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」を観に行きました。これは現代の戦争の中の、ある一場面で究極の選択をする人々の非常に緊迫感あるドラマだったんですが、観ている時に、これは「この世界の片隅に」と背中合わせのドラマなのでは?と思いました。「この世界の片隅に」は第二次世界大戦時代のごく普通の日常を描いてその背景の戦争を際立たせていたけど、「アイ・イン・ザ・スカイ」は戦場場面を見せることなくモニタ越しの99%緊迫した状況の中に1%の日常描写があることで、それがさらに際立って現代の戦争の残酷さを見せている作品でした。

自爆テロを企てるテロリスト達の活動を鳥タイプや昆虫タイプのドローンカメラで克明に把握し、現場責任者の大佐(ヘレン・ミレン)がこれ以上市民の犠牲を出さないためにもテロリストの本拠地を高度6000km上空の無人攻撃機からミサイル攻撃するべく指揮しているのですが、戦場から遠く離れた会議室で将軍や大臣達が現場の状況をモニタで見ながら攻撃命令に待ったをかける。なぜなら本拠地のすぐそばにいる民間人の少女が確実に犠牲になることがわかっていて、それが発覚した時に誰の責任になるのか問題になるから。一人の少女か、一般市民80名の犠牲か。観ていて一人よりも80名の命だろとかつい思ってしまうのがまたなんとも。毎日をいつものように過ごす少女や、子供(孫だったっけな?)におもちゃを買って帰る中将(アラン・リックマン)の姿が描かれることで、張り詰めた戦いの状況が際立ってしまっていると思いました。これは見応えがある作品でした。

ほとんどたいていの皆さんが大泣きする作品と現代の戦争を(多分)リアルに描いた作品を一緒くたにしてしまって、ファンの皆さんにはすまんですけど。でもってそれは置いておいて、本作が遺作となったアラン・リックマン、やっぱり声とイギリス風の発音がいいわ〜とか思っておりました(笑)。
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