2019年08月31日 (土)

8月22日、昨年初めて行ってみて面白かった「エンディング産業展」に、今年も行ってきた。エンディング産業展は名前の通り、葬祭関係や終活、相続、供養など御終い間際の業界の見本市というか展示会である。展示だけでなく3日間100コマ以上開催されているセミナーがどれも面白そうで、今年はどれかに参加してみようと思っていたのに事前申込をし忘れてしまった。会場で当日参加ができるか聞いてみたら、目当てのセミナーの開催時刻の少し前に直接セミナー会場で聞いてみてと言われたのに、展示の方を見ているうちにまたもや忘れるという体たらく。「おひとり様の終活」とか「生前葬」とか面白そうだったなあ。来年こそは参加してみたい。
でも会場に来ているのは多分ほとんどが関係業者の方なので、各ブースで物珍し気に展示物を見ていると担当者に「どちらの業者の方でしょうか?」と聞かれることも結構ある。仕事で来ているという緊張感が微塵もないし、素人感が満載だからだろうか。「一般の企業ですが人事の仕事をしています。色々とありますので……」というとそれなりに納得してくれるようだ。嘘ではない。ついこの間まで人事で仕事していたし、社員の死亡退職対応や死亡退職月の給与計算、会社が掛けている団体保険の死亡退職社員分の処理、葬祭関係の手続きなどもしていたから知っておいて損ではない。もちろん、今の仕事では全く必要ないが。
会場は東京ビッグサイト、今年はサークル申込で落選したので夏コミにも行かなかったというのに、「エンディング産業展」には来ている私。場所は西2ホールとロビーを使用しているので、規模はコミケよりもかなり小さめ(←比べるな)。できるだけ全部見てみたいのでサクサク行かなくてはと思いつつ、早速入口そばの骨壺の展示に目が吸い寄せられる。






桜柄の骨壺、いいなあ……。私は自分が死んだ後の事はどうでもいいと思っているので葬式も納骨も墓も供養も関係ないかもしれないけど、入るんだったらいい鴨。自分では見ることができないけど。その隣の水墨画の龍もナイス。他にもゴージャスな骨壺やポップな骨壺、遺影をプリントした骨壺など色々あり、ついじっくり見てしまう。いかんいかん、しょっぱなからこれでは最後まで見られない。しかし骨壺関連のブースはあちこちにあり、宝石のように美しいものもあれば自然に優しい土に還るものや紙製の物、木製の物など色々あってちょっとした美術展のようだ。

少し行くと棺に敷く畳業者のブースで入棺体験をやっていたので、初めて棺の中に入ってみる。身長163㎝の私だが、ジャストサイズ(昔は164㎝だったのだが加齢のせいで縮んだのである)。棺の片方の側面が透明の板になっていて外が見えるので、棺に蓋を掛けてすっかり納棺されてもそれほど閉塞感はない。思っていたよりも居心地がいい。昔のアニメや映画でドラキュラが棺の中で寝ている場面などがあったが、悪くないかも。棺の蓋には納棺されている人の顔にあたる部分に扉があり、担当者の人がその扉を開けると当たり前だが覗き込む担当者の人と目が合う。


宗教心は全くないけど、とてもシンプルな仏壇にも心惹かれる。仏壇仏具と言えばキンキラキンなイメージで、もちろん昔ながらのゴージャスな仏壇仏具もあったけれど、場所を取らないタイプやマンションの部屋にも合うようなシンプルな仏壇で仏具も木やガラス製ですっきりしているのや、小型のボックスの正面にブリザーブドフラワーの花を一面にあしらったタイプの仏壇などもよかった。場所をとらないタイプはスマホ型というか手帳型になっていて、カバーをめくるとディスプレイに映像が表示されるものもあった。


あちらこちらのブースで見かけたのは遺品整理、生前整理の業者さん。去年もあったけど孤独死した人たちの部屋のミニチュアは今年もあった。そして急いで作ったのか、手書きの「2019/7 新作」の札とともにあったのは血まみれの便器のミニチュア……。また別の業者さんは「このところ遺品整理の業者が非常に増えまして。皆様どこを選べばいいか迷うと思うんですが、全国で1万(業者)ほどです」とのことだ。本屋や図書館でも親の家をどう片付けるかとか終活・生前整理関係の本が増えてきたもんなあ。
うちは帯広の母(83歳)が絶賛断捨離中で、先月の父の一周忌で帰省した時に見たら、かつて父と母が寝室として使っていた部屋には家具はもちろんカーテンすらなくなっていて、まるで不動産屋と一緒に部屋探しをして候補の家に行ったみたいになっていた。実家の2階のフリースペースは1面の壁が本棚になっているのだが、ここもかつてはびっしりと並べてあった書籍類がほとんどなくなっていた。もっとも近所に住む妹の証言によると、父が認知症と診断されたあたりで母は自分の蔵書は残して父の蔵書をごっそりと処分したらしい。仏壇がある座敷には葬儀の時に遺影として使った父の写真の横に、母の遺影用写真が飾ってあり、わざわざ「家族葬用」とまで書いてある。
母は自分が死んだあとは葬式もしないで骨も適当にそこらへんに捨てといていいからと言っていたので、「家族葬」希望というのは母の精一杯の妥協なのかもしれない。わしら(私と妹)もその意は汲みたいけど、葬式というのは亡くなった人のために行うのではなく残された人のために行うもんだろうし、なかなかそうもいかないんじゃないだろうか。でも納骨とかお墓は関係ないからいいか? 会場にも樹木葬や海洋散骨、宇宙葬、粉にした骨を特殊な墓標に入れて海に沈めてやがて墓標もろとも海中で朽ちるのを待つという代物もあり、どれか母にお勧めできるかなあとか思いつつながめていた。他にも骨を加工して宝石にするとかアクセサリにすると言うのもあったけど、その気持ちは私にはわからんわー。




そして各種の棺。骨壷には心惹かれたのに棺には全く心惹かれないのはなぜだ。結局、燃やしちゃうからかなあ。
しかしまあ超高齢化社会でこれから広がっていく一方なせいか、寺社や葬祭業車だけでなく色々な企業の出展ブースがあった。文具メーカーは墓石修復用筆ペンとか卒塔婆用筆ペン、プリントゴッコで有名な会社は会葬案内や礼状ハガキをすぐに印刷できる印刷機、化粧品メーカーはご遺体専用化粧品やエンバーミング、ジュエリーメーカーは美しい分骨用骨壺、決済代行業者は葬祭業者の支払い時のクレジット決済サービス、システム開発の会社は墓石CADシステムや葬儀供養関連アプリ、バーチャル墓参りシステム等々。寺社に最適な毛筆フォントのブースもあった。フランスベッドはTVCMでも介護用ベッドの宣伝をやっているけど仏壇まで販売しているとは知らなあんだ。あの光岡自動車もクラシックな霊柩車を展示していた。


普段見ないタイプの展示も沢山あって面白かった。移動葬祭車は大きなトラックの中が教会の礼拝堂みたいな感じになっていて、前方に祭壇らしきもの、後方に椅子があって、会社や自宅、老人ホームや集会所など思い入れがある場所で葬儀やお別れ会ができます、というもの。


それから去年よりも多いと思ったのはペット関係。ペット用の骨壺、墓、棺はもちろんの事、ペット火葬炉(車)の展示もあった。今や家族よりもペットと暮らす高齢者もかなり増えているし、高齢者でなくてもペットの方が人間よりも寿命が短いから飼い主が見送る機会も増えているんだろうしなあ。


他にも本当に様々なブースがあり色々面白かった。最後に骨壷以外で印象的だったのはろうそくメーカーのブース。蓮の形の美しいろうそくや、葬祭業者が葬儀後に関係者のところに集金に行く時の手土産用のネタろうそく(左の写真の現物があったか覚えていないけど寿司ネタのろうそくがあり、役に立つし話のネタにもなっていいですよとのことだ)の他に六文銭型のろうそくがあった。何に使うのかと思ったら棺に入れるらしい。三途の川を渡るときに必要なものなので棺の中にいれておけばいいとのこと。これは。真田幸村ファンな私はもちろん入れるよ!(自分で見ることはできないがなー)。
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