ポーの一族(セレクション)萩尾望都のパーフェクトセレクションですよ! と言う訳で先月出た「ポーの一族第1巻 (フラワーコミックススペシャル) 」(萩尾望都、小学館、1,680円)だが、夢のような1冊なんですよ。作品の完成度の高さは今更言うまでもないが、さすがパーフェクトセレクションというだけあって、作品発表当時の形をかなり忠実に再現している上に、何よりも素晴らしいのは作品の発表順にそれぞれの作品が収録されていることだ。

一番最初に「すきとおった銀の髪」、そして「ポーの村」「グレンスミスの日記」、それから「ポーの一族」ですよ。私が持っている単行本は一番最初に出たフラワーコミックス版のみなので、他の作品集の収録順番がどうなっているのかまったくわからないが、この「ポーの一族」は発表順に読むのが正しい形なのだ。ひそかに縁取られてゆくバンパネラの一族の物語が、過ぎ行く時間の中で偶然にすれ違い、ほんの一瞬ともに過ごした人間達(バンパネラではない者)の目を通して描かれてゆく。それは遥か遠い、別の世界の夢物語の世界、そういう序章があってバーーーーンと第1章の「ポーの一族」が入ってくる。そして第2章のエドガーとメリーベルの物語(「メリーベルと銀のバラ」)の後に、現代編(といっても1959年だが)の「小鳥の巣」が入る。この3部作が1冊の本にぴったり収まっているのも素晴らしい。

「ポーの一族」は本来この3部作で終わるはずの物語だった。もちろん作者の中には数々のエピソードが渦巻いていただろうけど、萩尾望都自身はこの3部作で終わるのが一番美しい形であると思っていたのではないだろうか。別冊少女コミック1973年7月号で「小鳥の巣」の連載を終えた萩尾望都は半年以上仕事を休んでいたのだが、戻ってきてから描いた作品のタッチはずいぶんと変わってしまっていた。この大きな空白の後に描かれた数々の作品に、私は随分と違和感を覚えたものだった。しかしファンの要望は大きく、ついに別コミの1975年1月号にポーシリーズの新作である「エヴァンズの遺書」が発表される。でも私としてはたいそう複雑な気分がしたものだった。ポーシリーズはまだまだいくらでも見たい、でもこの物語は「小鳥の巣」で完全に終わっていたのに、と。まあ、そんな訳でポーシリーズ正編であるこの3部作までを1冊の本に収めてあるのは、実に正しい編集なのだ。

ポーの一族1しかしね、もちろん不満もかなりある。まず一番は当時の雑誌掲載ページを完全収録とか言いながら、タイトルロゴが何の変哲もない普通の文字になっていることだ。左の写真(連載当時の切り抜き)を見てもらえばわかると思うが、当時の別冊少女コミックの作品タイトルロゴは結構凝った形のものが多く、当時の形で収録したというなら、当時のロゴをそのまま乗せて欲しかった。しかも1回目だけではなく、連載2回目、3回目分にもちゃんと。それでこそ当時の気分を味わえるというものである。

また、この作品は一番最初の単行本(フラワーコミックス版)に収録された時に、(多分ページ調整のために)そこそこ加筆されているのだが、気分的には出来れば雑誌掲載時の形に近いものにしておいてくれるともっとよかったかも。例えば「ポーの一族」第2話と第3話の区切りに入れられているp.134とか、「ポーの一族」第4話の最初に入っているp.169~p.171、および第4話の表紙位置とか。まあ、これは実にどうでもいいことだけど。

ポーの一族(予告、カット切り抜き)左写真は連載当時の次号予告や口絵ページを切り抜いたもの。当時は今みたいに簡単に作品が単行本化されることはなかったから、気に入った作品があればスクラップして取っておくしかなかったのだが、萩尾望都作品は人気がなかったせいかいつも雑誌の一番最後にあって、スクラップが本当にしやすかったものだ。

なお、おまけでついている口絵カラー4ページは別にどうでもいいや。作品連載時に作品の一部として載ったもんじゃないし。口絵1ページ目は多分別コミ1972年12月号に載った漫画家競演の1973年カレンダーの一部。2ページ目3ページ目は一番最初の萩尾望都全集収録の「ポーの一族」の表紙として使われたもの(確かこれを4分割して表紙に使っていたんじゃなかっただろうか)、4ページ目の絵は覚えているがいつのものだか思い出せない。5ページ目は萩尾望都の初めてのコミックスとなったフラワーコミックス版「ポーの一族」第1巻の表紙である。

さて、「小鳥の巣」のラストの(そしてこのコミックス最後の)ナレーション、「バンパネラの血は、キリアンの体内に深く沈んで存在した。それは潜在的な因子として子孫にうけつがれてゆき……」「それはもっとのちの話になる」、すっかり忘れていたが、もしこの物語(キリアン子孫編)があるなら、やっぱり今でも読んでみたい!
関連記事
コメント
いや~真打ち登場でKさんのマニアぶりを拝見、心底感心しやした。
当時のスクラップを度重なる引越しにも散逸せず、すぐに取りだせる状態とは!
それにしても当時の萩尾望都って人気なかったんだねぇ。でもKさんの目利きぶり、さすがだわ。君が漫画の編集者になってたら、次々傑作を世に送りだしてただろう。
あっ傑作は年末に向けてただ今描いてたんでした(←プレッシャー)
2007/12/08(Sat) 23:58 | URL | oha~ | 【編集
>すぐに取りだせる状態とは!

魔窟にまとめて置いてあるからねぇ。もう、大掃除、何の事?な状態よ(あーーー、引っ越して思い切り片付けたい……)。

>あっ傑作は年末に向けてただ今描いてたんでした(←プレッシャー)

ふふ。ふふふ。えっと、現在ダメダメな確率90%。だってー、中途半端に体調不良な状態がずっと続いちゃってさー(しかも言い訳がきくような重病じゃなくてただの風邪なんだよね)、てんでだめだこりゃ、でございます。はぁ……(遠い目)。
2007/12/09(Sun) 20:54 | URL | tsumire→oha~さん | 【編集
すごい・・・
改めてtsumireさんの底力をみた・・・いえいえ本領発揮?水を得た魚?
萩尾望都はP子の周りでは人気者で良く真似て描いてました。
引越の度に蔵書をまんだらけへ売りに行き今じゃお宝漫画本はほとんど手元に残っていません。手放した事を後悔した本もあります。tsumireさんは後悔しない片付けをして下さい。
2007/12/10(Mon) 23:09 | URL | P子 | 【編集
>tsumireさんは後悔しない片付けをして下さい。

後悔しない片付けに必要な事は、忘却力でございます。そんなものがあった事を忘れる、読んだ事を忘れる、売り飛ばした事を忘れる、これが肝心でございます。特に私の場合、読んだ内容をよく忘れるので、昔読んだ名作傑作を今読んでも新鮮な気持ちで感動できてよろしゅうございます。ただし買った事を忘れて2冊3冊とかう危険も非常に大きいのですが。
2007/12/11(Tue) 06:46 | URL | tsumire→P子さん | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事へのトラックバック