外事警察1
「外事警察 第1回」(11月14日、21時NHK放映)。いよいよはじまりました、「外事警察」。あのドラマ「ハゲタカ」の訓覇圭Pと堀切園健太郎(演出)コンビによる土曜ドラマ、期待してみていましたが……いやー、緊迫感がただ事じゃないですよ。見終わった瞬間に、はぁ……と息を吐いている自分に気がついてこれまたびっくりだ。知らないうちに息をつめて見てたんですね(笑)。なお第1回目の演出は堀切園健太郎ではなく吉村芳之でしたが、緻密で計算された演出と撮影にはうならされます。画面の切り替わり切り替わりで見せられる次の画面のアングルにもほれぼれ。リアルな画面と隠し撮り撮影の微妙に落ちた画質の画面が交互に映し出され、それがうるさくなることなく、主人公・住本(渡部篤郎)が的確に出す指示とともにより緊迫感を高めていっています。

[ドラマ紹介]
「警視庁公安部外事4課へCIAから極秘情報が届く。<フィッシュ>と呼ばれる国際テロリストが日本に潜伏しているという。対テロのウラ作業を専門とする住本健司(渡部篤郎)は、所轄から来た松沢陽菜(尾野真千子)らとともに、怪しい外交官の追尾を開始。爆発物検知器を扱うメーカーの社長、谷村(田口トモロヲ)との接触現場を視認する。住本は外交官を追い込み、自らの協力者に仕立てることでテロの端緒を掴もうとする。」(公式ホームページ・ドラマ第1回紹介より)

主人公・住本の何を考えているのかわからない不気味な表情と何やら抱えている暗い過去、そして獲物を追い詰める手腕、ブラックホールのような男です。この男が物語の進展とともに次にどんな面を見せてくれるのか、そして最後にどうなってしまうのか、目が離せないです。

もう一人の主人公とも言える松沢陽菜(尾野真千子)がまたいいですよ。失礼ながら今までその名前に気にとめたことがない女優さんでしたが、この現実離れしたドラマの中で視聴者に一番近い立場にあって、このドラマと視聴者をつなぐ立場にある役を見事に果たしています。谷村(田口トモロヲ)を追尾していた時の、谷村に声をかけようとしてかけない逡巡の瞬間や、「原田直美は本当に親友だったのか?」、おまえは親友の事件をただ単に自分の野心のために利用したんじゃないのかと住本に見抜かれて言われた時の表情、彼女も何かただ事ではない過去があるんですね。

そして外事4課の他のメンバーですよ。風景の中に見事に溶け込んでいながら、それでいてプロジェクトのコマとしての動きをちゃんと視聴者に見せて納得させてくれる。このドラマの中では(失礼だけど)みなさん、俳優個人としての魅力はみじんも感じさせず、そこにいる公安外事4課のメンバーとしてちゃんと存在している。パズルの1ピースとしてきちんとハマっている。この配役にも隅々まで神経がいきわたっているのを感じさせられます。

またドラマの中で使われる符牒が面白いですね。「長男」「次男」「長女」「ハム」などなど。でもそれを言葉でほとんど説明することなく、場面場面を見せることでなんとなく視聴者にわからせてしまっている。このドラマは余計な説明や言い訳をしない。そしてこんな専門的な世界のことなど一般市民は知る由もないし、あくまでも作りごとの世界なのに、とてつもなくリアルに感じさせられます。谷村を逮捕する瞬間に店の中の客全員が立ち上がった瞬間なんか、思わずリアルで「全員かよっ!」と声を出してしまいましたよ(笑)。これが周囲の数名だけだったとしたら、「他の客はどう思うわけ、この騒ぎ?」とかまず疑問におもっちゃうもんね(私だけか?)。

うーむ、まいったなあ。こういう他人を信じられない物語や暗い話は好きじゃないのですが、これは見てしまいますね。しかし第1回の視聴率は6.6%ですってよ。でもNHKだから無問題~。ドラマ「ハゲタカ」だって似たような数字だったもんね。
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テーマ:ドラマ感想
ジャンル:テレビ・ラジオ
コメント
このドラマ、見てる間ずっと重かったけど、気持ちの良い重さでした。渡部篤郎、そんなに好きな俳優じゃないんだけど、そんなこと全然気にならず、不気味さが良かったです。でもさ、鷲津の例があるから、主人公が悪役的な行動を取っても、その奥をみてみたいというか、今の段階での悪さを楽しんじゃう妙な癖が自分についてることに気がついちゃったよ。
これは毎週見ちゃうなぁ。行列48時間の方は、来週一気に片をつけちゃうんでしょ?

>「全員かよっ!」と声を出してしまいましたよ
同じく。警官はせいぜいあのテーブルを囲んでるくらいで、周りの一般市民が「きゃーっっ」とか言いながら騒ぐとばかり思ってたのに、ここまで徹底していたとは。でもそっちの方が現実的だよね。あらかじめ場所が分かってるのに、一般市民を入れるわけないもんね。知らないうちに民放の刑事ドラマの、派手な演出に毒されていたかも。
これはちょっと、今週も楽しみでございます。(でもさ、狙撃の訓練のシーンで、「まずガラスが割れてから、続けて着色弾が当たる、そのチームプレイに注目」って………言われなきゃ分からんかったわ)
2009/11/20(Fri) 15:14 | URL | suika | 【編集
いやあ、ホント、重いよこのドラマ。重いドラマって見ると疲れちゃうからここ10年くらいは見ないようにしてたのにさー。「ハゲタカ」よりも格段に重かったなあ。

>今の段階での悪さを楽しんじゃう妙な癖が自分についてることに気がついちゃったよ。

ふふふ、奥様ったら、より「悪い奴」がお好きだからご用心されているのね。ドラマ版鷲津みたいに最後の最後でいい奴になっちゃそれはそれでちょっとがっかり?(笑)

>行列48時間の方は、来週一気に片をつけちゃうんでしょ?

そうなのよ!! 森繁久弥にまたもやこんなところで邪魔をされるとは無念。NHK Hiビジョンでは通常放送みたいなのにさっ! そしてもちろんDVDが出たらちゃんと6話分あるんだろうけどさーーー、ちゃんと6話分、放送してほしいよ、まったく。

>知らないうちに民放の刑事ドラマの、派手な演出に毒されていたかも。

確かにねぇ。「踊る大捜査線」が初めてテレビで放映されたときに、今までの刑事ドラマとまったく違って、そのあまりにも杓子定規な公務員的な描写が面白かったもんだけど、これもまた、今までのこの手のドラマとは違ったタイプのドラマだったねぇ。

>狙撃の訓練のシーンで、「まずガラスが割れてから、続けて着色弾が当たる

奥様ったらまた深いところをのぞきこんじゃって(笑)。
2009/11/20(Fri) 17:30 | URL | tsumire→suikaさん | 【編集
こんばんは。
私も「外事警察」すっかりハマリました。
キャッチフレーズの「その男に騙されるな」どおりの第1回は、60分緊迫感が持続して、心身ともに疲れました。
でも、こういう疲労は大歓迎。
細部まで緻密に構築されていて、台無しにする要素は一切なかったし(可愛いだけの小僧とかワンパターンな顔しかできない女優もどきとか)、こういう作品に出会うと、珍しく(笑)払ってよかった受信料!って思います。

>>知らないうちに息をつめて見てたんですね(笑)。

私もそうでした。
終わって、ふぅーって息を吐いたら、お腹に力を入れてたから腹筋は痛いし、知らないうちに両手をグッと握っていたので爪が掌に食い込んで痛いしで、全身いたい。
腹を凹ますには、外事警察が効果有り、かも。(笑)

>>そして外事4課の他のメンバーですよ。

いや~お見事でしたね、あの溶け込みよう。
劉一華の人生を絶った男を演じていたという滝藤賢一も外事4課メンバー。
さすが、気配を消す達人。(違)
それにしても、これからは、レストランでメールしている人やモバイルPC見てる人、「お客さん」と小声で言っている人、オフィスにゴミ回収に来るオバチャンにも疑惑の目を向けそうですよ。

第1回ゲストの田口トモロヲは、ずっと抑えたトーンで耐える社長を演じていだけに、ロープを手にした後、取り乱すシーンとか、最後に確保されて力が抜けるシーンとか、やりきれなくて胃が痛みました。

主人公2人も素晴らしいし、期待が膨らんでます。
でも、「行列48時間」まだ見て無いし…年末にまとめてみるか…(弱気)

2009/11/20(Fri) 21:45 | URL | 美冬 | 【編集
本当に見事でしたね、外事警察。でも、あの緊迫感は年寄りにはちょっとキツイですよ(笑)。翌日が休みである土曜日でなければ見られなかったかも。

>腹を凹ますには、外事警察が効果有り、かも。

先ほど美冬さんのお座敷を覗かせていただいたら、「詰めていた息を吐き」って書かれていたので思わず「あなたと私は同じなんだ」とつぶやいてしまいましたよ(笑)。

>劉一華の人生を絶った男を演じていたという滝藤賢一も外事4課メンバー

そうなんですよね、滝藤賢一ってどこかで聞いた名だよなあ、なんだっけ!?って検索しちゃいましたよ。

>これからは、レストランでメールしている人やモバイルPC見てる人……

隣のテーブルの普通そうに見える客ももちろん疑惑の対象ですよ(笑)。

>第1回ゲストの田口トモロヲは、ずっと抑えたトーンで耐える社長を演じていだけに

私、あまり予備知識を入れずに見てたんで、あれが田口トモロヲだとは気がつかなかったんですよ。それくらい、見事に抑えた演技だったとも言えるんでしょうけど。

>主人公2人も素晴らしいし、期待が膨らんでます。

ほんと、これからが楽しみですね。
ちなみに今日の「行列48時間」を見て、もしかしてこれはある意味「外事警察」のB面と言えなくもないかも……と一瞬だけ思いました(笑)。ふふ。
2009/11/21(Sat) 01:06 | URL | tsumire→美冬さん | 【編集
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 いや~どす黒い・・・ 「チャレンジド」のさわやかで常識的な世界から一気にまっくらやみの混沌の中へ・・・ でも、嫌いじゃないですョ~ 渡部篤郎さんのギリギリのところを楽しんでるような顔が好きです。  『国際テロリストを相手にした極秘捜査班が存在する。...
2009/11/20(Fri) 15:53:09 |  トリ猫家族