This is It
別にマイケル好きでも何でもない人々がこぞって絶賛する映画「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」を見よう見ようと思いつつ、仕事と同人誌の原稿が忙しくてまったく行けないままの年の暮れ、やっと仕事の山場を越えてかなり定時に会社を出る事ができるようになり、そしてどうにか原稿を描き終えることができた12月下旬の水曜日に見てきましたよ。

[作品紹介]
「最期のコンサート”THIS IS IT”がリハーサル映像により奇跡の映画化! 今年の夏、ロンドンのO2アリーナで開催されるはずだった彼のコンサート”THIS IS IT”。本作は2009年4月から6月までの時間の流れを追いつつ、百時間以上にも及ぶリハーサルと舞台裏の貴重な映像から構成されている。幻となったロンドン公演の監督を務めていたケニー・オルテガが映画も監督し、全世界同時公開された。」(Amazon作品紹介より)。

マイケル・ジャクソンは、気がついたら常にテレビの中にいて、一緒に成長して、一緒に年をとってきたような存在である。そうい意味ではマイケルは意識しないでもない存在だったし、「We are the World」のドキュメンタリーなんかも結構食い入るように見たこともあった(ドキュメンタリー好きだし)。いや、何よりも子どもの頃、映画「Ben」のテーマを聞いた時に、あの美しいメロディに乗せられたよく伸びる澄んだ声に魅せられてレコードを買った事もあったんだった。だからもしかするとマイケルが「好きでもなんでもない」というのは違うのかもしれない。でもここ10年のマイケルは宇宙人だったし、テレビに映し出される彼は常にスキャンダルの渦中にあり、それをなんとなく残念な気持ちで見ていたのかもしれない。だから今現在マイケルに思い入れはないものの、昨年の訃報には本当に驚いたし、何かこう、微妙な喪失感はあったかもしれない。

さてそんな訳で「THIS IS IT」ですよ。祝日の水曜日だったせいか、劇場は激混み。上映開始15分前に劇場内に入ったら見渡す限り空いている席等ほとんどなく、うわー、11月の「ハゲタカ」(そう、あの「剣岳」の木村監督大演説会の時の「ハゲタカ」ですよ)に続いてマイケルも立ち見か!?と思ったけど、なんとか空いている席を見つけて座ることができました。よかった、年寄りには立ち見は堪えるんだよ……。

そして。いやー、これは。完璧な、圧倒的な「力」を見せられるというのはこういうことである。東欧圏の軍事パレードなどで凄まじい人数による一糸乱れぬパレードやパフォーマンスを見せられたときに、思わず「おおぉっ」とつぶやいてしまうが、もっと圧倒的にエンタテインメント性が高く、そして完成度が高く、楽しい。プロフェッショナルな人達によって緻密に組み立てられてゆく一大プロジェクトのドキュメンタリーに、ただただ見入ってしまいましたよ。マイケル・ジャクソンという人はクリエイターとしての才能がすごかっただけでなく、プロデューサーとしてもすごい人だったんだな。

何分にも実際に行なわれるはずだったコンサート直前の死だったために、このリハーサルの完成度も非常に高く、これを生で見ることはできないというのがどれほど大きな損失であったのか、そして今後はもう新しいマイケルを見ることは決してかなわないのだという、失われてしまったものの大きさに、マイケルのファンでもなんでもない私でも愕然とします。

コンサートの歌やダンスの合間に別撮り映像が挟み込まれるのだが、これがまた完成度が高く、それぞれが1本のミニ映画としても楽しめる代物だし、それが歌やダンスと融合されたステージがまた見ごたえがあり、この手のコンサートのダンスにはまっっったく興味がない私でも引き込まれて見てしまいました。ちなみに私がどれくらいダンスに興味ないかというと、コンサートやライブや演劇や映画でダンスの場面になるといつも必ず眠ってしまうくらい興味がない。なので実は今回も見る前は半分くらい寝てしまうだろうと思っていたのだが、しかし私としては画期的なことにダンスシーンでも全く眠ることなく見ていましたよ(←自慢することじゃあねえ)。

またね、この映画で描き出されているマイケルの人柄?にも驚かされる。この映画を見る前はどちらかというと、あのビジュアルやメディアからもたらされる情報などからかなり宇宙人に近いのかもという先入観があったのだが(←ヒドイ)、それは全く払拭されてしまいましたよ。合間合間に見ることが出来るマイケルは常に神と人に感謝を忘れない人だった。なんというか……。童話で「みどりのゆび」(モーリス ドリュオン、岩波書店)と言うお話がある。触れるとそこから芽が出て花を咲かせる不思議なみどりの指を持つ男の子チトは、やがて世界中の武器や兵器も緑で一杯にして使えなくしてしまうのだが、最後に目の前に高く上に延びていた蔓によじのぼって地上から消えてしまうのである。そしてチトが去った後には馬が芝生を食んで文字が残っていた、「チトは天使だったのです」と。まあ何せ読んだのが100万年ほど大昔なので詳細は間違っているかもしれないがざっとこんな話である。私はこの「THIS IS IT」という映画を見終わった時にまず、この「チトは天使だったのです」という言葉が頭をよぎってしまいましたよ。まあ天使にしちゃあえらいケバイが、神様は別にマイケルのケバさは気にしないだろう。

そんな訳で全く期待していなかったこの映画をたっぷりと堪能したのだが、驚いたのは映画が終ると拍手が起こったことである。ここ数年見た映画で見終わった後に拍手を聞いたのは「ハゲタカ映画祭」とこの「THIS IS IT」ぐらいなものである(超微妙作品・東京国際映画祭の時の「笑う警官」を除く(笑))。やっぱ、すげーよ、マイケル。しかしこのコンサートリハーサルにかかわった人々がマイケルの死を知った時の、足元が崩れ落ちるような衝撃はどれほどのものだっただろうか。ごくごく一般の、のほほんとした日常を生きる普通の観客であるが故に、そのあまりにも大きな衝撃と深い絶望に出くわさずに済むのは幸せな事なのか?

さてこの作品は1月27日にはDVDが発売されるのですぐにも見ることができるが、出来れば劇場の大きなスクリーンで見てみて欲しい。10月下旬から2週間の限定上映だったはずが、余りの評判に随分と拡大公開されているようで、今日現在(1月12日)でも256箇所の劇場で見ることができる。

 映画「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」上映情報(Movie Walker)

そして最後に今更だが。仏教徒じゃないだろうけど、マイケル・ジャクソンさんのご冥福をお祈り致します。
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テーマ:マイケルジャクソン
ジャンル:映画
コメント
こんばんは。
よろしうございましたでしょう? MJの「THIS IS IT」。
『ハゲタカ』に出会わなければ、私の2009年No.1映画だったと思います。
やっぱり本物の力には叶わないです。

私はマイケル・ジャクソンのファンではないのですが、やはり突然の訃報を聞いた時はショックでした。
職場では、「酒が喉を通らない(酒だけだったらしい)」とガックリする中年男性も居たりして、「やっぱりファンが多いんだなぁ」と思ったり、テレビの追悼番組でPVを観て、改めて高いクオリティに瞠目したものでした。
その程度に、マイケルのスター性やエンターテイナーとしての力は知っているというレベルの一般ビーブルの私なのに、2回も観てしまいました。
観終わったときの感想はひとことで「良いものを見せて貰った」でした。

映像と音楽に感動して涙がじわーっと出てきて困ったという経験は、汚れちまったオトナの私には、久々のことでした。

>>この映画で描き出されているマイケルの人柄?にも驚かされる。

そうなんですよ。
パフォーマーとして、クリエイターして、プロデューサーとして、超一流だっことを再認識しただけでなく、なんという純粋で真摯な人だろうと、映画を観ながら感動していました。
岩崎弥太郎のように「この世に神も仏もないのか」なんて思うこともある私が、「マイケルは神に愛された人なんだ。神が私達に少しの間遣わしてくださった特別な人だったのかも」なんてメルヘンなことをマジメに思って、また涙ぐんだりしてましたよ。

本物の力、本物を追求し創造しようとする人々の姿。
その中心で輝き、周囲を照らすマイケルってすごいな…と陳腐な言葉しか出ないのがもどかしい。
あのショーの完成形と、ステージのマイケルが観られないのは辛いことですが、このドキュメンタリーと彼の数々の作品が遺されたことは、私達にとって、大きな幸運だと思います。
うーん、珍しくマジメに語ってしまって、恥ずかしい…。
2010/01/12(Tue) 23:05 | URL | 美冬 | 【編集
そうか、そんなにいいのか………
最初の上映期間を見逃して悔しい思いをしていたところ、再上映決定のニュースを見てすっかり行く気でいたのに、親知らず騒動でなんとなく気持ちが萎えちゃったんだけど、やっぱ見てくるかなぁ。
特にマイケルファンじゃない人が(もちろんわたしもそう)、良かったと言ってるってのが説得力があるんだよねぇ。
「ゴールデンスランバー」の試写会のチケットが当たったので、こちらも見ると思うから、なんだか今年は映画づく年になるのかも。(筋金入りの出不精のはずなのに)
2010/01/13(Wed) 00:12 | URL | suika | 【編集
同じ年なのよね。
まあ、お気に召してよかったです。
大きな画面じゃないと感激も薄れる映画ですからね。やっぱこれは劇場行かないとね。
私が見たときも拍手が起こりましたよ。鞍馬天狗みたいだなー。

マドンナ、プリンス、マイケルと、1958年はアーティストが豊作でしたね。
2010/01/13(Wed) 00:38 | URL | みどりーぬ。 | 【編集
ネタばれ有りです
>気がついたら常にテレビの中にいて、一緒に成長して、一緒に年をとってきたような存在である。
>でもここ10年のマイケルは宇宙人だったし・・それをなんとなく残念な気持ちで見ていたのかも

そうそう正に我々世代のファンじゃない人の感覚を代弁してるわ、tsumireさん。
大昔、立川澄人司会の音楽番組にジャクソン5が出て、まだ小さかったMJを見て以来、時々食い入るように見たり聞いたりするけど、ファンという訳ではないという感じ。
ちなみに私は「ジャクソン5ベスト」と「オフザウォール」と「スリラー」はアルバム持ってる。今でも音楽番組のマイケル特集を録ったビデオがたくさんあって、それを見た娘にファンだったの?と聞かれたことがあるけど、なんか違う。
なんでかなぁ?と考えて、この記事で理由が分かった気がしたわ。
「天使」=人間じゃない、から疑似恋人にはなりえず、若い娘にとって思い入れの対象にならなかった気がする。まぁ私にとっては「音楽ロボ」に近かったな。
・・・それがこの映画で50になっても業界の大家の傲慢さはみじんもなく、繊細な感性を持ったまま徹底したプロ意識を持ってるマイケルを見て、思いがけずマイケルその人に感動してしまったよ。
「音楽ロボ」じゃなく「天使」だったのね、MJ。(どっちにしても人間じゃないが)
若いギタリストに「ここは君の見せ場だ。僕がそばにいるから思い切ってやってごらん」というところで心底感心。彼は指導者としても才能あったんだね。


2010/01/13(Wed) 10:14 | URL | oha~ | 【編集
>『ハゲタカ』に出会わなければ、私の2009年No.1映画だったと思います。

おおお、すごい。私は何せ去年は本当に他の映画を見てないので(とほほ)、 比べようがないという有様で。でもこの映画の評価はどこを見ても高いですし、納得ですねえ。

>私はマイケル・ジャクソンのファンではないのですが、やはり突然の訃報を聞いた時はショックでした。
>職場では、「酒が喉を通らない」とガックリする中年男性も居たりして。

なんだかジョン・レノンの訃報を聞いたときのような……。あの時は私はロックにもポップスにもまったく疎かったので、友達がなんで泣いているのかよくわからんかったなー。

>観終わったときの感想はひとことで「良いものを見せて貰った」でした。

いやあ、本当にそうですね。でもこれってマイケルが死ななきゃこうしてここまでドキュメンタリとしてちゃんと作り上げた形のものを目にすることはなかったんじゃないのかという気もするし、でも生きていれば本物のステージを見る機会がいくらでもあったはず。ただしその場合は別にファンでもないのでそれをわざわざ見に行こうと言う気にはならなかっただろうから、きっとマイケルをこうして知る事もなかっただろうなと思うし。うううむ。

>「マイケルは神に愛された人なんだ。神が私達に少しの間遣わしてくださった特別な人だったのかも」

私も神も仏もほったらかしな人間ですが、確かにこれはそう思わざるを得ないような映像でした。マイケルと同じ時代に生きて、直接彼を知ることはなかったけれど(当たり前)、彼が残した作品やこういう映像を見る事が出来るというのは、やはり幸せなことなのでしょうね。
2010/01/13(Wed) 23:13 | URL | tsumire→美冬さん | 【編集
>そうか、そんなにいいのか

中途半端にコンサートを再現したりしようとはせずに、舞台を作り上げていく過程をきちんと見せるドキュメンタリとして優秀だね。そしてその素材が非常にエンタテインメント性と完成度が高いので、結局舞台を楽しむのと同様の満足感に近いものを得られるのかもなあ。

そういえば親知らずの方は、もう大丈夫なのかしら? 私は奥様が親知らずを抜いた日と同じ日に人間ドックを受けておいて本当によかったよ。なにせあれから3kg太っちゃったからな(泣)。

>「ゴールデンスランバー」の試写会のチケットが当たったので、こちらも見ると思う

今週号の週刊朝日には、表紙モデルの香川照之をよいしょするためとは言え「今年の「ナンバーワン映画」早くも決定?」とかって書いてありましたよ。でも私も見てみたいかも。

>筋金入りの出不精のはずなのに

私達さー、「ハゲタカ」でタガが外れてしまったのよ、きっと……。
2010/01/13(Wed) 23:36 | URL | tsumire→suikaさん | 【編集
>大きな画面じゃないと感激も薄れる映画ですからね。

なんか立川あたりのなんとかっていう劇場で見る「THIS IS IT」は音響設備のレベルが高いので格段に違う、とかって記事を読むと、後もう1回そこで見て見たいとか思うね。

>マドンナ、プリンス、マイケルと、1958年はアーティストが豊作でしたね。

ちょっとニュアンスが違うけど、山口百恵もお忘れなく(笑)。
2010/01/13(Wed) 23:41 | URL | tsumire→みどりーぬ。さん | 【編集
ファンではないのだけれど、どこか意識のすみっこにある感じ、同世代ならではのものなのかもしれないわね。

>「天使」=人間じゃない、から疑似恋人にはなりえず、若い娘にとって思い入れの対象にならなかった気がする。

確かにねぇ、そう言う種類の人じゃあなかったわね、多分。50のオッサン(←ひどい)をつかまえてなんだけど、マイケルだけは本当に「永遠の少年」だったのかもしれない。

またね、今さら言うまでもないけど言葉を選ぶセンスがまたよくて、なんだったけな、あまりよく覚えてないけど「余韻が欲しいんだ、月の光に浸るような」というのとあともう一カ所、聞いててうなってしまった場面があったなー。まあ、本当に色々な面で驚かせられた映画だったね。
2010/01/14(Thu) 00:13 | URL | tsumire→oha~さん | 【編集
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