先週のNHK朝ドラ「あまちゃん」、天野アキ(能年玲奈)と種市先輩(福士蒼太)の別れの場面が本当にしみじみとよくて、この年代の少年少女のこういう場面を正面からきちんと描いているドラマってちょっとないよなあとか思いました。少女漫画の「君に届け」をこの「あまちゃん」スタッフが作れば無茶苦茶面白くてなおかつ大傑作になるかも、と思ったり。

さて、評判も視聴率もいいようで何よりな「あまちゃん」、私も土日にまとめて1週間分見ています。朝ドラが楽しみなのは去年3月までやっていた「カーネーション」以来、でも「カーネーション」より前に見た朝ドラがどれか思い出せないくらい大昔の事で、この2年の朝ドラの面白レベルは非常に嬉しい限りです。でも「カーネーション」と「あまちゃん」って何から何まで対照的なドラマで、見れば見るほど面白いドラマって通り一遍のもんではないと思います。

「カーネーション」はドラマとしてまず物語が面白くて、波瀾万丈の女性の一生を描いているだけに特に最初の頃はクエストをクリアし敵キャラやボスを倒してステージをクリアするRPG的な面白さもあったし、緻密に構成された脚本の見事さとそれをきちんと見せてくれる演出や役者さんに感動し、そして何よりも女性の成長と老いを正面からちゃんと描いてくれていた事にも驚きました。今までの朝ドラでも老いた主人公の描写や老年期の女性の描写はもちろんあったけど、「カーネーション」では「老年期にある女性」を描くのではなく、「女性が年を重ねる事」「女性が老いる」ということを正面から描いている事、それは実にただならぬ事だと思いました。あれだけメリハリが効いて泣かせどころも山ほどあったドラマなのにも関わらず、血も涙もない私は「カーネーション」を見ても泣いた事は一度もなかったんですが、でも見終わった時の感無量感とか意味不明な達成感(笑)はちょっとなかったです。

それに対して「あまちゃん」はドラマの物語としての面白さよりも、まずキャラクタの面白さと漫画的な個性と魅力(ヒロイン能年玲奈のピュアっぷりがすごすぎ。また橋本愛の等身大の美少女っぷりとか、一癖も二癖も三癖もあるサブの皆さんとかナイスすぎ)、実にリズミカルでコミカルな楽しい会話、オタク心をくすぐるネタ発掘の楽しさ、お芝居的な場面の見せ方や時間描写の巧みさ、なんというか「ドラマの宝石箱やぁ〜」(by彦摩呂?)というか遊園地的な楽しさが満ちあふれている作品だと思います。

でもクドカン(宮藤官九郎)脚本のドラマって、私の場合、ものすごーーーく面白くて毎回楽しみでリアルタイムで見るために残業をしないでドラマ開始時刻までに必ず帰宅して見て今も好きなドラマ(「タイガー&ドラゴン」2005年、TBS、「流星の絆」2008年、TBS)か、リズムが合わなくて苦痛で長くて3回目くらいでリタイア(「マンハッタンラブストーリー」2003年、TBS、「我輩は主婦である」2006年、TBS、「うぬぼれ刑事」2010年、TBS、「11人もいる」2011年、テレビ朝日)か、あるいは放映終了後に再放送やビデオで見て結構好きかも?(「池袋ウエストゲートパーク」2000年、TBS、「木更津キャッツアイ」2002年、TBS)と、どれかに分かれるので、今回も期待半分不安半分でした。

しかしね、一番最初の、

お母さんが倒れた!(‘j’)/
今、救急車を呼んだYO! (‘j’)/
意識がないYO! (‘j’)/
やばい!(‘jj’)/
最悪の事態だYO! (‘jjj’)/
今来れば間に合うかも!
手遅れかもしれない!(‘jjj’)/
喪服はもっているか?

このメールで掴みはOKだったよなあ。最初、なんだ、この顔文字は??とか思ったら、これは驚愕表現の「じぇじぇ」とリンクしているんだもんね。最初はまあ無難な感じ?(←エラソー)とか思いつつ見ていましたが、まず驚いたのはこのドラマのヒロインである天野アキ(能年玲奈)が、表向きのヒロインであり、裏のヒロインにアキの母親・春子(小泉今日子)が設定されていることですよ。朝ドラの主人公っつうたら若くてピチピチした女性と決まっているだけに、こんなのもアリなのか!?と思いました。しかも春子の青春時代の描写は過去の回想ではなく過去の現在を見せてくれるので、2008年〜2009年の現在と1984年の現在が入り交じり、1984年の面影を残す春子の部屋はあくまでも時が止まった過去の部屋なのに、そこにいりびたる2008年のアキにとっては母への共感ではなく、大昔に生きた同じ世代の女性への共感とあこがれとなっている。

そして、表のヒロイン、裏のヒロインだけでなく奥のヒロイン(なんだそりゃ)として祖母の夏(宮本信子)が設定されている。それぞれの世代の女性を出す事で各世代から共感を得られるというというのはあるかもしれないけど、「カーネーション」とは全く違う形で女性の成長と老いを正面から描写していると思いました。しかしながら現時点では夏ばっぱの過去の現在の描写はほとんどないので、これはもしかしてこれから起こる311の時に何か描かれるのではないか?という気がします。

また舞台となる北三陸の海の美しい事、悲しくなってくるくらいです。「風の谷のナウシカ」の前半でのどかで美しく平和な風の谷の描写がこれでもかというくらいあるのは、風の谷がナウシカが命を賭けて守るに値する故郷である事を見せるためでしたが、このドラマで北三陸の美しい海とこの場所を大事にしている人々がこんだけしっかり描かれていると、あの美しく寄せる波がやがてどす黒く人の命を奪う波になっていったのを(テレビでだけど)見てしまっているだけに(そういう見方をするのは正しくないのかもしれないけど)色々考えてしまいますね。

でもそんな余計な事をなんか考えずに見るのが一番なのかも、このドラマは。
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コメント
>でも「カーネーション」と「あまちゃん」って何から何まで対照的なドラマで、見れば見るほど面白いドラマって通り一遍のもんではないと思います。

確かに。「カーネーション」は、朝ドラにもかかわらず、爽やかさをかなぐり捨てて、たくましく生きていく女を描くという意気込みが感じられたけど、「あまちゃん」は、表面は爽やかなんだけど、くせものの爽やかさが感じられて、そこもとても魅力的。(多分、クドカンの計算通りなんだろうなぁ)

脇の魅力も尋常ではなく、ナイスなオヤジ達のドラマはいくつかあるけど、ここまでおばちゃん達の登場が待ち遠しいドラマは、覚えがないわ。(あんべちゃんの代わりに来た事務員の役者もナイス!)

>このメールで掴みはOKだったよなあ。

全く全く。
このメールを見て、「カーネーション」以来の、朝ドラを録画で視聴することを決定しちゃったもんね。あの顔文字の「ジェジェ」には、やられたと思ったよ。

>でもそんな余計な事をなんか考えずに見るのが一番なのかも、このドラマは。

うん、そうするつもりです。このまま息切れせずに突っ走って欲しいです。(潜水土木科の担任もいい味出してるよね)
9月がくるのが寂しい。(早っ!)
2013/06/05(Wed) 21:14 | URL | suika | 【編集
ホルスタイン柄のカットソー着てブティック今野の前に飾られているユイちゃんが見てみたい(笑)

家人が面白がって観ているので必然2回観ているワタクシですが、いや~渡辺えりに負けそうです!!
『あまちゃん』は漫画的な脚本、漫画的な演技なのに自然に面白くて、演出と演技力に拍手喝采してます。

個人的な好みは『カーネーション』なんだけど観ていて楽しい!
「ありえない~」な展開でも『あまちゃん』ならありだなと納得させるパワーがある気がします。

細かく観るのは苦手なんだけど、多分色々ちりばめられてるんだろーなーと
「アキちゃんのキャラで舌打ちするか?」とか、「大事なことだから3回言ったのかい?」
等とつっこんで楽しんでます~。

とりあえず、訓覇さんの朝ドラ好調でヨカッタ!!
2013/06/10(Mon) 19:29 | URL | BOOKO | 【編集
>「カーネーション」は、朝ドラにもかかわらず、爽やかさをかなぐり捨てて、たくましく生きていく女を描くという意気込みが感じられたけど、「あまちゃん」は、表面は爽やかなんだけど、くせものの爽やかさが感じられて、そこもとても魅力的。

「カーネーション」は骨太で物語でぐいぐい世界に引込まれる作品だったけど、「あまちゃん」は色んなものが表にも奥にも仕込んであって、何が出てくるのか楽しみなびっくり箱っつーか。

>脇の魅力も尋常ではなく、ナイスなオヤジ達のドラマはいくつかあるけど、ここまでおばちゃん達の登場が待ち遠しいドラマは、覚えがないわ。

いやあ、ほんと。おばちゃん達が個性的で味わい深くて実にいい塩梅で。おばちゃんがこんなに魅力的なドラマってそうそうないよね。

>このまま息切れせずに突っ走って欲しいです。

半年の放映期間、短いのか長いのかよくわからんけど、どういうところに着地するのかも楽しみです。
2013/06/25(Tue) 00:21 | URL | tsumire→suikaさん | 【編集
>ホルスタイン柄のカットソー着てブティック今野の前に飾られているユイちゃんが見てみたい(笑)

いいかも(笑)。でもって、アキとユイちゃんのどっちを応援するかっつーと、天然なアキよりは必死なユイの方を応援したくなります。

>『あまちゃん』は漫画的な脚本、漫画的な演技なのに自然に面白くて、演出と演技力に拍手喝采してます。

脚本は漫画的だし、演出も吉本新喜劇的なところすらあるのにそれがまた実にうまく使ってコミカルな場面を有効に見せているだけでなく、必要な場面をじっくり描くためにすごく効果的な時間の節約もしているんですよね。軽食&喫茶リアスとスナック梨明日の切替場面とか、オタク連中が群がっている様を早回しで見せたりとか。

>個人的な好みは『カーネーション』なんだけど観ていて楽しい!

そう、私も「カーネーション」の方が好きだし、「カーネーション」は物語性やドラマの力は「あまちゃん」の比じゃないと思うです。「カーネーション」は朝ドラ史上に残る傑作、それにひきかえ「あまちゃん」は物語性というポイントではかなり弱いんだけど(キャラの魅力は絶妙だけど)すごく色々なチャレンジをしているドラマなんですよね。しかもそれがちゃんと成功している。そういう点でもすごいドラマだと思います。

>細かく観るのは苦手なんだけど、多分色々ちりばめられてるんだろーなーと
「アキちゃんのキャラで舌打ちするか?」とか、「大事なことだから3回言ったのかい?」
>等とつっこんで楽しんでます~。

このドラマは突っ込む楽しさをちゃんと見せてくれるし、発掘する楽しみも残しておいてくれるんですよね。

>とりあえず、訓覇さんの朝ドラ好調でヨカッタ!!

そう、それが一番なの。訓覇さん、2007年「ハゲタカ」、2009年「外事警察」、2011年「TAROの塔」、そして2013年「あまちゃん」と、2年に1回しかドラマ作らないけど、作品はいつも必ず何かを残してくれるんですよね。ドラマのPって、本当に大事(しみじみ)。
2013/06/25(Tue) 00:55 | URL | tsumire→BOOKOさん | 【編集
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