大奥」(よしながふみ、白泉社、ジェッツコミックス、2005年、600円)。「男子のみを襲う謎の疫病が国中に流行り、男子の数が激減。男女の立場が逆転した世界に生まれた貧乏旗本の水野は、大奥へ奉公することを決意する。女性の将軍に仕える美男三千人が集められた女人禁制の場所・大奥で巻き起こる事件とは…!? 」(白泉社作品紹介ページより)。

たまたま連載雑誌「メロディ」を立ち読みしたら第2回目か第3回目ぐらいだったので、どういういきさつで男女逆転した世界になったのか分からず、ただ単にそういう設定のパラレルワールド物かと思っていたのだが、違っていましたよ(いや、多分パラレルワールド物には違いないのだが)。大奥という「男だけの」閉鎖された世界に君臨するただ一人の女、将軍、その将軍を取り巻く逆転世界の妙ちきりんさは、実に面白く痛快であり爽快でもある。

例えば、第1巻前半の主役である水野が、子種を望む貧しい女達の願いを聞き届けるのも、大奥に入ってすぐに古参連中に手込めにされそうになり反撃するのも、幼なじみに対する思いとともにこの物語ならではの設定からくる納得できる(??)理由がある。あるいは後半の主役である将軍吉宗(もちろん女性だ)がちょっと見かけた男どもにお手つきするシーンなどもこの作品世界ならではの面白さだ。

しかしそれだけではない。この作品は国の建て直しをはかり、大奥の改革を行なう将軍吉宗の政治漫画としても実に面白く、さらに後半吉宗がどうしてこのような形の男女役割の世の中になっているのか疑問に思って調べあげて行くあたりなど、悪人として知られるリチャード3世の実像にせまろうとした歴史ミステリー「時の娘」(ジョセフィン・テイ、ハヤカワ・ミステリ文庫)や、「あほ」と「ばか」の境界線はどこになるのかという謎から、「アホ・バカ」という言葉がどのような変遷を経て現在の言葉になったのか緻密に調べ上げて面白おかしく追求したルポルタージュ「全国アホバカ分布考」(松本修、新潮文庫)と同じような、歴史ミステリーとしても楽しめるのだ。

不定期連載らしいが、これは次の巻も楽しみな1冊だ。
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