あの痛快だった「文学賞メッタ斬り!」が帰ってきた、その名も「文学賞メッタ斬り!リターンズ」(大森望、豊崎由美、383p、PARCO出版、2006.08、1,680円)。「2004年刊の第2弾。メッタ斬りコンビが帰ってきた! 文学賞に喝! さらに賑わう文学賞界隈を、ますます冴えた刃で徹底論破。第1回メッタ斬り!大賞の発表や最新受賞作全採点「文学賞の値うち」付き。」(Amazon商品説明より)。

私なんざ子供時代からずっとSFやミステリー、ノンフィクション、エッセイばかり読んできて文学的基礎教養がまったく無いわけだが、そういう素養も知識もなくても全然OK(多分)。もちろん前回の「文学賞メッタ斬り!」の方を未読でもOK(多分)。ベストセラーや話題作の名前ぐらいは知っていたほうがより楽しめるだろうし、結構な読書家ならなおのこと楽しめる1冊だ(でも文学に思い入れがある人にはムカつく内容かも)。あまりのメッタ斬りぶりに(もはや斬殺レベル?)「人の事いえるのか!?」という声もあるようだが、これはこれでこういう芸として成り立っているんだからいいのである。それにどれほどひどい悪口雑言であろうともこのお二方、面白い小説を読みたいんだ!という飽くなき探究心と愛(え?)があるから、批評ぶりも実に面白くてなおかつ(多分)的確、面白い作品なら素直に読んでみたくなるし、そうでない作品も「そんなにひどいならちょっと読んでみようかな」とさえ思うくらいなのだ。もっとも、これは言われた本人にはかなりダメージがあると思うけど、でも基本的に新人には言ってないし(言ってもちゃんとアドバイスも兼ねている)、毎度の事ながら大丈夫なのか??というくらい大御所を叩いていて痛快。しかね、直木賞選考委員の渡辺淳一が候補作に「人間が描けてない」といちゃもんつけて落とし続けているという話には「人間が描けてないのはおーまーえーだーろーーーーー!!」と叫んだのは私だけではないはず(参照:8月31日「立ち読み15分、「失楽園」渡辺淳一)。

飛ばすトヨザキ社長と割と冷静っぽい大森望、しかしその実ちゃんとドカスカダメージを与えている点、大森望の方が世間一般で言われているようにやはり腹黒なのかも。もちろん世間一般ではこういうのを「大人の態度」というのかもしれないが。しかしね、この本の何がいいって、やはりわかりやすいということだ。たまに新聞の文芸時評なんか読む事があるが、私が頭が悪いからし方がないのかもしれないとはいえ、とにかく何言ってんだか全然わからないことが多い。でもこの本の中に登場する各作品に対する批評は(特に巻末特別付録の「文学賞の値打ち」掲載の各作品評など)とにかく簡潔明瞭、なおかつスパイスの効いた作品紹介が結構読書意欲をそそるものにもなっていてナイスですよ。例えば芥川受賞作の「グランド・フィナーレ」(阿部和重)なんざ「ロリコンのダメ男が故郷に帰ってくる話。前半はその情けなさがいい味を出してますが、後半は「それなんてエロゲ?」的なシチュエーションにはまってゆく。(後略)」(大森)、「受賞発表直後のNHKニュース7における畠山智之アナいわく、「特殊な性的趣味を妻に知られて離婚され、失意のうちに田舎に戻った男性が、ひょんなことから頼まれた女子児童への演技指導を通じて、現実とのつながりを取り戻してゆく様子を描いた作品」。ロリコンと言えない苦しさは理解できますが、「現実とのつながりを取り戻してゆく」話とまとめるのはいかがなものか。(後略)」(豊崎)ってな感じ。

いやあ、楽しゅうございました。

参照:2005年2月10日「「百年の誤読」岡野宏文、豊崎由美
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テーマ:雑記
ジャンル:日記
コメント
おもしろそうッスね。なんかtsumireさんの読書癖というのか読書歴というのか、これがわたしとどんぴしゃ。純文学と言われているものや各種受賞作品は大きく迂回して、純粋に自分が楽しめるエッセイや推理小説ばっかり読んできたけど、(なんと、作りもしないのに料理本も大好き!)そんなわたしでも楽しめるのね。それにしてもナンシー関といい、「恨ミシュランシリーズ」が好きなことといい、今回のこの本がおもしろそうだと思うのも、つまりわたしは人が誉めるものを疑ってかかるというか、あらをさがすというか、そういう天邪鬼気質を改めて自覚した次第でございます。(同志?)
2006/09/03(Sun) 11:33 | URL | suika | 【編集
>つまりわたしは人が誉めるものを疑ってかかるというか、あらをさがすというか

既成のものもの、既存の価値観に対して疑問を抱く姿勢は重要であり大事な事であります(←同じく天の邪鬼な自分に対する言い訳)。アラ探しものでも(←そんなジャンルがあるのか!?)、面白い芸として成り立ってなくちゃ読んでても不愉快なだけだもんね。ナンシーも西原も作品内容は面白いし、自分をちゃんと客観的に見ていたり時に偽悪的ですらあるところがまた、いいよね。

ただこの本の場合は、ごくごくたまに「それなんてエロゲ?」とか「反省しる!」というような2ch用語が出てくるのがいかがなものか、と思わないでもない(私は気にしないけど)。それからトヨザキ社長の悪態オヤジっぽい口調がハナについたり生理的に受け付けないという人ももしかするといるかも。また、素直すぎる人(書いてあることをそのまま鵜呑みにする人)にもお勧めしない。つまり私やsuikaさんのような天の邪鬼(←決めつけ)には楽しめる1冊でございます。
2006/09/03(Sun) 12:22 | URL | tsumire→suikaさん | 【編集
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